FC2ブログ
flower border

自殺した人をわざわざ探しに行き、じっさいみつけた話③

Categoryむかしの話

少年からの電話で、もうそんな時間なんだと気づいて茫然でした。

1時に私が来ないので、変に思ってかけてきたと言うのです。


「ごめんね~」と言いながらパトカーの時計を見ると1時30分をまわっていました。







「ごめん。悪いんだけどね、ちょっと用事がまだ済まなくて…」

「あ、そうなんすか」



少年の声にかぶるように誰か複数の声がしていました。

誰かいるのかと聞いたら、友人がふたり来ていると言う。


その友人というのも未成年なんだろうか…と考えて頭痛がし始めました。

本当はここでお説教したかったのだけれど、電話でするようなことではないと思い直し…。


店番&少年の監視を頼んでいる男の子に電話を代わってほしいと言うと、少し前に帰ってしまったと言う。

もう店じたいは閉めていて、なので少年はひたすら私を待っていたのだと。


「ごめんね、もう少し時間がかかると思うのよ。だから売り上げからお小遣い取っておいてね。それでちゃんとご飯たべるのよ、早く済んだら寄ってみるからね」

少年は無邪気に「わっかりましたー、お疲れさまでーす」と言って電話を切りました。


まさかね、自殺者を見つけたせいで今パトカーの中なんだよー、とも言えず。

やれやれ。
警察に解放されたらタクシーで店へ直行しなきゃ…







友人が私をじっと見て何か言いたそうだったので、少年とのやりとりと、店の状況を話したのですが、

「飲むんだろうねぇ」と友人。

「えっ?」と私。

「お酒。もう飲んでるかも」

「えーっ、未成年だよ⁈」

「だって店に寝泊まりしててお酒が腐るほどあるのに、その年頃の子が友達と集まってて飲まないわけないよ」



正直、私はそこまで頭がまわっていませんでした。

早婚だった友人は高校生の息子がいるので、そういったことを想像できるのだろうな、とその時思いました。

私は、今の今までそんな単純な想像力も働かないほど、あの年頃の少年たちに関する経験値がなかった、ということなんでしょうか。


私が黙り込むと、友人が私の腕を掴みながら押し殺した声で囁きました。

「ねぇ、酔っ払いの少年が3人だよ⁈」

「…うーん、まだ飲んでると決まったわけじゃ…」

「いや、だから! もし飲んでたらどうする?」

「どうって…」

「どれくらいが適量か限度を知らずにお酒を飲んじゃってる男が3人もいるとこへ、ひとりで行くつもり?」

「男? まだ子供だよ⁈」

「アタマは子供だよ。だけど身体は男でしょが!」






後日友人から聞かされたのですが、友人の剣幕に私はポカーンと口を開けていたらしいです。







パトカーの千葉さんも黙り込むほどの友人の気迫に、やっと多少は考える力が私にも戻ってきたみたいでした。

なんというか…急に心細いような不安なような、なんとも言えないブルーな気持ちに襲われ…。




「店には行っちゃだめだよ、今日は」

「うん…」

「少年、早いとこ家に帰さなきゃね」

「…そうだね」






私たちが乗った車両の他にもう3台パトカーがいたのですが、3台はいつのまにかいなくなっていました。

「現場」のものものしさがだいぶおさまった雰囲気になってきて、
ふと運転席の千葉さんがパトカーを出ていきました。

千葉さんは刑事と一言二言話してから戻ってきて、私と友人に「許可がでたから帰ってもいいって」と言いました。

千葉さんのパトカーが私たちをそれぞれの家まで送ってくれました。




帰り際に「現場」がどんな状況になっていたのか、細部の光景は思い出すことができません。
もしかすると、少年のことが気がかりだったせいかもしれないです。

正直とてもとても疲れていて、1分でも早く布団にもぐりこみたい気分でした。







だけどね、
まだまだ私の悪夢の1日は終わったわけではなかったんです。










帰宅したのは2時半ごろでした。

玄関に入るなり、すぐに少年に電話をしてみました。
立て続けに4回かけたけれど、4回とも留守電でした。





今思うと、なんだか妙な胸さわぎがしていたと思います。

念入りにシャワーをし、布団に入りましたがまったく眠れず、ため息ばかりついているうち午前4時をまわってしまいました。







「アタマが子供でも身体が男」


友人が言っていた言葉は私には現実味がなく、
私にはあの少年は無邪気な子供にしか思われず、
考えれば考えるほど、どうしてもそんなふうにしか思えなくなってしまって。。



パトカーの中にいた私に電話をしてきた時、少年はすごく無邪気な声で、開口一番こう言ったのです。


「まるにゃんさん! 今日売り上げすごいっすよ! Gさんと僕、がんばりました!」



誇らしげにね、
とても嬉しそうに、そんなふうに言ったんです。

「えーっ、すごいじゃない!」って、私は言ってあげなかった。

すごく素っ気ない生返事しか返さなかったのです。

「頑張ったねー」って、言ってあげてない。





ダメだ。
このままじゃ何も手につかない。




ついに決心し、私は布団を出て着替えました。
お酒はとうに抜けていたのかもしれないけれど、無線タクシーを呼んで店へ向かいました。
午前5時になろうとしていました。

着いたら、少年が無事なことだけ確認してすぐ帰ろう。

起きていたら
「頑張ったねぇ」と、
それだけ言って帰ろう。
そう思っていました。





経営者兼責任者不在のその店は、建物の階段を下りた地下にありました。

毎晩の閉店作業として、店と建物の入り口との二箇所を施錠するようになっていました。

地下には婚約者の店のほかに小料理店が1軒ありましたが、小料理店より婚約者の店のほうが閉まるのが遅いので、最後に責任をもってビルの入り口を施錠する、というのが決まりごとだったわけです。

といっても、普段は1時に閉まることなどなく明け方までやっている店でしたが、責任者が不在の時には早めに閉めさせることにしていたようです。





店の前でタクシーが止まる前にすでにひとつ、私は異常に気づきました。

ビルの入り口のドアが開けっ放しになっていたのです。



私はタクシーを待たせ、変な胸さわぎを感じながら階段を下りていきました。








結論から言いますと、店内に少年はいませんでした。
一緒にいると少年が言っていた友人2人もいませんでした。

というか、無人の店のドアは施錠されるどころか開けっ放しで、
中から何かわからないヒステリックな音楽が大音量で流れていました。


中に入ると、カウンターの上にはタバコがぎゅうぎゅうに押し付けられた灰皿がみっつ、そして携帯電話が2台。

携帯電話は2台ともコンセントに差し込んであり…つまり充電中になっていました。

恐れていたお酒を飲んだような形跡はなかったけれど、なぜか空のグラスがひとつと、ワイルドターキーというバーボンウィスキーのボトルがポツンと置いてあり…。


他には、少年がベッドにしているらしい木製のベンチの上に、タオルや靴下などが隅にちんまりと固めてあり、
スニーカーが1足、ベンチ脇に揃えて置いてありました。


少年たちは食事でも買いに出掛けているのだろうか⁈
鍵もせずに⁈

それくらいしか考えられず…。

しかしこのまま私が店とビル入り口を施錠して帰ると、もしも彼らが鍵を持ち出していなければ建物から締め出すことになる。

かといって、このままにして帰宅するようなことは断じてできない。


あきらめのため息を吐き、待たせていたタクシーを帰し、私は少年が戻るのを待つことにしました。





20分ほど待ったでしょうか。
唐突に階段を下りてくる複数の足音がして、私は飛び上がるようにして座っていた椅子から立ち上がり、急いで店の外へ出ました。

「あっ、まるにゃんさん」

下りてきたのは少年ではなく、いつも店番を頼んでいたGくんとYくんでした。
私が店から出てきたのを見てものすごく驚いていました。

「どうしたの?」と私も驚きながら聞きました。

「いやーそれが…」とGくん。
「僕らもあんまりよくわかんないんですけど、」

「ちょっと…あったらしいんですよね、客と」

「あった? 何が? 誰と誰が?」

私は尋問口調になっていたでしょう。
嫌な予感で、くちびるが小刻みに震えているのがわかりました。



「すいません」とGくんが私に頭を下げました。
つられてYくんも。





「あいつら、たぶん警察です」







次回へ続く









スポンサーサイト



2 Comments

ここ  

つづき気になります...

blogが面白くて今日初めてなのに色々読んでしまいました。
特に「自殺した人をわざわざ探しに行き、じっさいみつけた話」の続きが気になります...
探しましたが探せなかったので続きの執筆よろしくお願いします!

2018/01/12 (Fri) 15:01 | REPLY |   

まるにゃ@ん  

ここ さま


こんばんは✧ \(°∀°)// ✧

あの記事、自分の予想より長くなりすぎて、③まで書いてエネルギー切れしちゃって(≧∇≦)

了解です( ̄^ ̄ゞ
なるべく早めに、④を更新したいと思います。

気長にお待ちください∠(・`з´・)

コメントありがとございました🐾

2018/01/13 (Sat) 20:11 | REPLY |   

Post a comment